サピックス特別インタビュー
算数入試で問う力、
数学力を伸ばす授業~吉祥女子中編~
2025.07.22
1938年の創立以来、「社会に貢献する自立した女性の育成」をめざす吉祥女子中学・高等学校は、伝統的に理系志望者が多いことでも知られます。“数学好き”を育てる授業と、入試のポイントについて、数学科の西塚純一郎先生に伺いました。

広野中学で行われている数学の授業数や内容を教えてください。
西塚 中1の1年間は、「代数」「幾何」という分野分けは行わず、「数学」という一つの教科として週に4コマの授業を設定しています。分野を分けない理由は、たとえば代数で学ぶ知識が、先に幾何のほうで必要になったり、ノートを2冊準備しなければならなかったりと、2分野を行ったり来たりすることでロスが生じてしまうから。初めて数学に触れる中1のうちは、あえて1本化することで一つひとつの単元をていねいに進めていきたいと考えています。
広野 算数と数学は似て非なる教科ですから、そうした配慮はありがたいですね。
西塚 1年間かけて数学の考え方をインストールした後は、中2から「代数」と「幾何」に分かれ、週の授業数も各3コマずつの計6コマに増えます。これによって、中2修了時には中学内容をおおかた学び終え、中3からは高校内容に入っていきます。授業は、教科書を基本に置きつつ、各教員によるオリジナルプリントを多用しながら展開しています。

広野 授業を進めるうえで、意識していることを教えてください。
西塚 中1の初めに生徒に必ず話すのは、「数学の考え方の良さを知ってほしい」ということです。中学受験の算数は、「この問題はこう解く」というような1対1の対応関係を覚え、いかに正確に解くかが課題だったと思います。しかし数学では、まず問題を一般化し、自分の知っている解法に当てはめて解くというアプローチが求められます。まずはその違いを知り、受け止めることが、数学を学ぶ第一歩なのではないかと思います。
広野 数学が苦手な生徒に対するフォローはありますか。

西塚 はい。定期試験の成績が思わしくない生徒には、こちらから指名をして補習を行っています。基本的な練習問題を繰り返しトレーニングするというようなオーソドックスな内容ですが、中学ではひんぱんに補習に呼ばれていた生徒が、高校生になって飛躍的に成績を伸ばすというケースもあります。数学は、「わかる」と「できる」に大きなハードルがある教科だと思います。基本的な演習を繰り返すことで、その溝を埋めることが大切です。
広野 数学が得意な生徒に向けたプログラムもあるのですか。
西塚 長期休暇中には、発展的な内容を扱う講習を開講しています。中3と高1、高1・2など、異学年合同で行うものも多く、先輩は「後輩に負けていられない」、後輩は「先輩に追いつきたい」という気持ちで取り組むので、双方にとってよい刺激になっています。
広野 そういう縦のつながりが、伝統的に理系人材を多く輩出する貴校の実績を支えているのでしょうね。さて、次に中学入試についてお伺いします。2025年度から出題形式が大きく変わりました。この狙いについて教えてください。
西塚 はい。大問を五つから六つに増やすと同時に、記述問題を廃止し、ほぼ均等配点としました。以前は、記述を含む応用問題に大きく配点を割いていましたが、それでは、その年に取り上げた分野が得意か不得意かで、点差が大きく開いてしまいます。受験生の努力をできるだけ公平に評価したいという思いから、この変更に踏み切りました。
広野 貴校の問題は、解法を丸暗記しただけでは解けないような、少しひねった出題が特徴的です。中学入試を通して、どんな生徒に入学してほしいとお考えですか。
西塚 考えることをいとわない受験生に来てほしいと思っています。本校が、王道の問題から少しひねったものを出題しているのも、目線を変えることによって、視界がぱっと開けるような感動を味わってほしいからです。途中の枝問・小問が次につながるヒントになっています。そこに込められているメッセージを読み取り、深く考え抜く力を入試本番までに準備しておいてほしいと思います。

School
Data
- 所在地
- 〒180-0002 武蔵野市吉祥寺東町4-12-20
- TEL
- 0422-22-8117
- 学校長
- 赤沼 一弘
- 創立
- 1938年に地理学者の守屋荒美雄が創立した帝国第一高等女学校が前身。
1947年に現校名に改称。 - URL
- www.kichijo-joshi.jp

個性と自主性を伸ばし、
多様な進路の実現をサポートする
建学の精神「社会に貢献する自立した女性の育成」の下、生徒一人ひとりが互いの価値観を尊重し、個性と自主性を発揮しています。ハイレベルな教材を使用するなど、授業の充実を図るのはもちろん、行事やクラブ活動にも積極的に取り組みます。さらに海外に11の姉妹校・友好校を持っており、国際交流の機会が多いのもポイントです。高2でのコース分けでは、文系(高3は国公立文系・私立文系)、理系のほかに芸術系も設置し、幅広い進路に対応しています。噴水や屋上庭園のある校舎は優美な印象で、明るく落ち着いた環境下で学べます。