サピックス特別インタビュー

算数入試で問う力、
数学力を伸ばす授業〜豊島岡女子学園中編〜

2025.09.16

豊島岡女子学園中学校・高等学校は、1892年創立の女子進学校です。例年、卒業生の半数以上が理系学部に進学するなど、“理数に強い”と評される同校の授業と入試問題へのこだわりについて、数学科主任の桑原夢春先生に伺いました。

(左)数学科主任 桑原 夢春先生 (右)インタビュアー SAPIX小学部 教育情報センター 本部長 広野 雅明 氏

広野数学のカリキュラムの特色を教えてください。

桑原 中1・2は週5時間、いずれも代数と幾何をバランスよく取り入れ、この2年間で中学内容を終え、中3からは「数学Ⅰ」「数学A」に入ります。文理分けは高2で行いますが、本校の特徴は、文系クラスでも数学を高2で週6時間、高3で週5時間(そのうち3時間は選択授業)学ぶことです。それにより、総合的な数学の力を養います。

広野 授業を進めるうえで、工夫していることはありますか。

桑原 同じ学年を担当する教員同士で「この時期までにこの単元を終わらせる」といった最低限の取り決めはありますが、それ以外は各教員の裁量に任せています。最近、私が担当している中2のクラスでは、「チェバの定理」「メネラウスの定理」を少し拡張したものを紹介し、証明しました。これにより、本質から元の定理の意味を考えるきっかけになったと思います。

休み時間の様子

広野 中学受験でも、解き方を丸暗記して問題に臨む生徒が年々増えている印象です。

桑原 暗記は正しい解法へのショートカットに過ぎません。「なぜそうなるのか」を正しく理解していないと、問題の出し方を少し変えられただけで対応できなくなってしまいます。そこで授業では、「ここまでは中学受験で学んだよね。では、ここから先を一緒に考えてみよう」と声を掛けながら、暗記志向から理解志向へとシフトしていくように意識しています。

広野 家庭学習の量は多いのでしょうか。また、変わった課題などはありますか。

桑原 多いほうだと思います。しかし、数学に演習量は不可欠なので、必要最低限の量だと我々は思っていますし、数学でつまずかないための配慮です。
 また、中1・2では、夏休みの宿題として「算額をつくろうコンクール」への応募をめざし、和算を用いたオリジナルの作問に取り組みます。生徒たちはグループ内でそれぞれに考案した問題を持ち寄り、自分にはない友人の発想や着眼点に刺激を受けています。

中1生徒の算額作品例

広野 次に、中学入試についてお伺いします。貴校の入試問題は、オーソドックスな出題が多く、毎年、問題数・頻出分野・難易度ともに、ある程度の“型”が決められている印象です。作問で意識していることを教えてください。

桑原 50分という限られた試験時間のなかで、気持ちよく臨んでほしいですし、受験生に「実力を出し切った」と思ってもらえるような問題を出すよう心がけています。良問であることと、問題の難度が高いことは必ずしもイコールではないので、そのバランスには細心の注意を払っています。

広野 途中式は問わず、答えのみを書かせるのも特徴的ですね。

桑原 はい。「途中式が合っていれば部分点を与える」というのも一つの考え方でしょう。しかし、算数(数学)は正解を求める学問である以上、本校では正確な計算力や集中力も含めて、受験生がきちんと答えにたどり着けるかどうかを見たいと考えています。

広野 最後に、受験生に向けたアドバイスをお願いします。

桑原 本校の入試が答えのみを問う形式だからといって、普段の学習でプロセスをおろそかにしてよいわけではありません。日常の勉強こそ、きちんと途中式を書き、順序立てて考える習慣をつけてほしいと思います。
 また、スポーツ選手にとってのフィジカルのようなイメージですが、算数(数学)ではスピードと正確さは不可欠です。それをふまえたうえで、算数の段階で身につけた力、およびやればできるんだという達成感に誇りを持ってください。その先のスキルは、中学でいかようにも伸ばせますから、安心して入学してほしいですね。

入試問題にチャレンジ2025年豊島女子学園中学校 数学科選定

School
Data

所在地
〒170-0013 豊島区東池袋1-25-22
TEL
03-3983-8261
学校長
竹鼻 志乃
創立
1892年、女子裁縫専門学校として設立。1948年、現在地に移転するとともに、豊島岡女子学園に改称。
URL
www.toshimagaoka.ed.jp
校舎写真

高い進学実績を誇る、SSH指定校

「道義実践」「勤勉努力」「一能専念」を教育方針とし、「志力を持って未来を創る女性」の育成をスクールミッションに掲げています。心を育む「運針」や「礼法」、全員参加のクラブ活動が特徴的です。運針は毎朝5分間、無心で白い布に赤い糸を通す中で、集中力を養い、努力を積み重ねることや基礎・基本の大切さを学びます。一方、礼法の時間には、小笠原流礼法の講師を授業に招き、和室や洋室での立ち居振る舞いなどを学びます。2018年度からスーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定され、現在2期目となり、探究活動やグローバルプログラムをますます充実させています。