サピックス特別インタビュー

算数入試で問う力、
数学力を伸ばす授業〜東邦大学付属東邦中編〜

2025.09.24

例年、生徒の約7割が理系学部を志望する東邦大学付属東邦中学校・高等学校。とりわけ医歯薬系への進学実績が際立つ同校では、どのような授業が行われているのでしょうか。数学科主任の土田雄大先生と、数学科の山口武史先生に伺いました。

(中)数学科主任 土田 雄大先生 (左)数学科 山口 武史先生 (右)インタビュアー SAPIX小学部 教育情報センター 本部長 広野 雅明 氏

広野貴校は、伝統的に理系志望の生徒が多いことで知られていますね。

山口 本校では高2で文理分けを行いますが、例年、理系:文系=7:3となっています。文系クラスに進んだ場合でも、選択自由科目として数学を履修する生徒が多いのが特徴で、今年度の高3生を見ても、約40名が文系数学の授業を選択しています。

広野 中学では、どのような授業を展開していますか。

土田 中2までに中学内容を終えることを目標に、1週間のうち代数中心の授業を3コマ、幾何中心の授業を3コマ設定しています。代数・幾何のいずれの分野も均等かつ手厚く指導しているのが特徴です。

広野 数学は算数と違い、答えを出すことよりも、その過程を論理的に説明する力が求められます。算数が得意だった生徒ほど、そのギャップに戸惑うのではないですか。

中1数学B「平面図形」の授業の様子
高3の授業では大学入試問題も取り入れた演習が中心となる

山口 はい。そのため、代数であっても幾何であっても、しっかり“書かせる”ことを意識しています。ここをおろそかにしてしまうと、自分が頭の中で組み立てた考えを相手にうまく伝えられないまま、学習内容が先に進んでしまいます。中学生の間は、特に時間をかけて、自分の思考した過程を順序立てて書くことの重要性を指導しています。

広野 授業ではICT機器も活用しているのですか。

山口 全教室に配備されているホワイトボードを使って、関数のグラフの変化や回転体の動きなど、生徒が頭の中で想像しにくいものを動画イメージとして見せることはあります。しかし、本校の考える学びの基本は紙と鉛筆です。課題もタブレットを通して提出させる方が効率的かもしれませんが、鉛筆で書かれた文字だからこそ伝わるものがあると考え、ノートやプリントでの提出にこだわっています。生徒の筆圧が強ければ、自信を持って書いていることがわかりますし、逆に弱々しければ、どこか半信半疑のまま解いているのではないかと気づくことができるからです。

広野 貴校の中学入試では、奇をてらわない、オーソドックスな出題が目立ちます。作問の意図を教えてください。

土田 きちんと努力してきた受験生が、その力を正当に発揮できる問題を出したいと考えています。計算力と思考力のバランスがとれた出題を心がけていますし、特定の分野に偏りが出ないようにという点も意識しています。

山口 入試で重視しているのは、算数の学習を通して獲得しておくべき基本的な計算力を備え、法則への理解や図形の基本をしっかり押さえているかどうかです。本校が「新傾向問題」と呼ばれる先進的な問題よりも、オーソドックスで正統的な問題を好んで出題するのは、基礎力を身につけた生徒に入学してほしいと考えているからです。実際に、そうした力を持つ生徒の方が、本校の数学の授業にフィットしやすい傾向があります。

広野 最後に、受験生に向けてアドバイスをお願いします。

山口 本校の入試問題において、各大問を構成する小問は、大問のゴールに向かうための小さなステップです。大問が6~7題あったとしても、それぞれの1問目は、大問の解決の糸口を示唆する問題であることが多く、正答率もおおむね高い傾向があります。そこを落とさず、いかに骨のある問題に食らいつけるかが、合格の鍵になるでしょう。

土田 受験生の皆さん、特に算数に苦手意識を持っているお子さんに伝えたいのは、入試問題を通して新しい学びを得てほしいということです。初めは正解のイメージがつかめなくても、一つ一つの小問を解き進めるなかで、その先の道筋が見えてくることがあります。自分が持っている武器を組み合わせて、問題と真剣に向き合う姿勢を大切にするとともに、問題が解けた喜びを原動力に、地道な努力を重ねてほしいと思います。

入試問題にチャレンジ2024年東邦大学附属中学校 前期入学試験問題

School
Data

所在地
〒275-8511 千葉県習志野市泉町2-1-37
TEL
047-472-8191
学校長
松本 琢司
創立
1952年に東邦大学付属東邦高等学校が設立。1961年に附設中学校が開校。1970年より男女別学を改め共学化。
URL
www.tohojh.toho-u.ac.jp
校舎写真

理系志望者が多い大学付属校。他大学受験でも高い実績

「自然・生命・人間」を尊重する建学理念・教育方針に基づき、「学問への強い意志」「絶え間のない自己鍛練」「謙虚な自己省察」を備えた志の高い青年を育成します。生徒一人ひとりが自己の可能性を見いだす「自分探し学習の時間」を展開し、併設大との連携による「学問体験講座」など教科学習支援講座も設けています。大学付属校ですが、他大学進学希望者への指導が中心。特に医歯薬系に大きな実績を残しています。中高一貫ならではのカリキュラムで、高2で高校の基礎学習範囲を終える「早期完習学習」が展開されます。