サピックス特別インタビュー

算数入試で問う力、
数学力を伸ばす授業~洗足学園中編~

2026.01.19

洗足学園中学高等学校では近年、理系進路を選択する生徒が増えています。その背景にはどのような工夫があるのでしょうか。「数学的コミュニケーション能力」を向上させる授業の特徴と、入試問題の狙いについて、数学科の平井健先生に伺いました。

(左)数学科 平井 健先生 (右)インタビュアー SAPIX小学部 教育情報センター 本部長 広野 雅明 氏

広野 数学の学びのなかで最も大切にしていることは何ですか。

平井 わたしたち数学科が目標としているのは、「数学的コミュニケーション能力」の育成です。この「数学的コミュニケーション能力」とは、目の前の問題を構造的にとらえ、自分の考えを第三者に論理的に伝える力のこと。この力を突き詰めていけば、数学のみならず、他教科にも応用できる汎用性の高い課題解決能力が身につくと考えています。

広野 そのために実践している、独自の取り組みがあれば教えてください。

平井 たとえば、「ミネルヴァ像(校内のアトリウムにある彫刻作品)の高さを測ろう」「おはじきゲームの必勝法を編み出そう」などのミッションを課すことによって、生徒に「どうすればうまくいくのか」を主体的に考えてもらう機会を大切にしています。これらの課題の行きつく先は「比」や「整数論」ですが、試行錯誤のプロセスを通じて生徒自身がその本質に気づくことが重要だと考えています。また、教科横断型の授業にも力を入れており、中2では国語の小説に出てくる現象が実現可能かどうか数式を立てて確かめたり、中3では理科のpHを対数の概念と一緒に学んだりと、生徒の好奇心をかき立てるようなテーマを入り口に、教科の垣根を超えた学習を展開しています。

ミネルヴァ像
『ミネルヴァ像』の高さを測ろう

広野 カリキュラムの特徴を教えてください。

平井 本校では、生徒の疑問を深く掘り下げ、議論の時間を多く割けるよう、授業時間を1コマ65分に設定しています。中1は幾何が週2コマ、代数が週2コマとしており、50分授業に換算すると、それぞれ3コマ弱の計算になります。中2までに中学内容を、高2までに高校内容を終え、高3の1年間は、大学受験に向けた実戦的な演習に費やします。

広野 小テストなどもこまめに行われるのですか。

平井 はい。朝学習や授業冒頭の短い時間で計算問題に取り組みます。計算力の向上には積み重ねが必要不可欠ですから、毎日のルーティンとして習慣化させることが大事だと考えています。

広野 ICTの導入も進んでいるのですか。

平井 はい。1人1台のノートPCを持ち、授業で活用しています。先日は、高2の生徒が数の「平均値の定理」を学んだ際に、「この定理を人にわかりやすく伝えるためのスライドを作ろう」という課題を出しました。また、作成段階においては、AIを使用することも許可しました。生徒たちは、ビジュアルを多用したデジタルならではの表現方法や、AIを活用した思考作業を組み合わせながら、さまざまなアイデアを出してくれました。

おはじきゲーム
おはじきゲームの必勝法を編み出そう

広野 まさしく「数学的コミュニケーション能力」の育成に直結する試みですね。さて、貴校は2026年度から、中学入試の日程をこれまでの3回から2回に縮小されます。入試のポイントについて教えていただけますか。

平井 入試日程は少なくなりますが、問題の構成は例年通りを考えています。具体的には、5つの大問のうち、前半は計算問題や典型問題、後半は図形や条件整理、規則性をテーマにした問いを出題します。1回、2回を合わせるとすべての分野を網羅できるようなイメージです。基礎力を磨き、手を動かして考えるプロセスをおろそかにしないことが大切です。

広野 最後に、受験生に向けてアドバイスをお願いいたします。

平井 2025年度の入試問題では、影になる部分の面積や体積についての問題を出題しました。試験に出そうなテーマにばかり気を取られるのではなく、たとえば、光と影の関係といった身近な現象に興味関心を持って生活することを心がけてほしいと思います。入試を通して評価したいのは、受験生の「数学的コミュニケーション能力」の素地です。解法を丸暗記するのではなく、「なぜそうなるのか」を考えながら、楽しんで解いてもらいたいですね。

入試問題にチャレンジ2025年度洗足学園中学校 入学試験問題 算数第1回

School
Data

所在地
〒213-8580 川崎市高津区久本2-3-1
TEL
044-856-2777
学校長
宮阪 元子
創立
1924年創立。1926年に洗足高等女学校を設立。幼稚園から大学院までを擁する総合学園。
URL
https://www.senzoku-gakuen.ed.jp/
校舎写真

教育目標「生徒一人ひとりの幸福な自己実現」の具現化に羽ばたく

1924年に創立された洗足学園は、川崎市溝の口にある校地に幼稚園から小学校、中学校・高等学校、短期大学、音楽大学、大学院までを擁する総合学園です。広い敷地に建つ豪華客船を思わせる楕円形の中高校舎には、大小2つの講堂も備えられています。英語教育の充実には定評があり、帰国生の受け入れにも熱心。また、音楽を通した情操教育も重視しています。近年は目覚ましい大学進学実績で注目を集めており、教育目標を確実に具現化するために、さまざまな教育改革を実行しています。