サピックス特別インタビュー
算数入試で問う力、
数学力を伸ばす授業~渋谷教育学園渋谷中編~
2026.04.20
「自調自考」を基本理念に掲げる渋谷教育学園渋谷中学高等学校では、21世紀の国際社会で活躍する人材の育成をめざしています。生徒が“みずから考える”ための授業の工夫や、入試問題の特徴について、数学科主任の近藤義治先生に伺いました。
広野 貴校のカリキュラムの特徴について教えてください。
近藤 本校では、6年間をAブロック(中1・2)、Bブロック(中3・高1)、Cブロック(高2・3)に分け、各教科の学習計画を細かく記した「シラバス」に沿って授業を進めています。数学の場合、Aブロックでは、「数量」を週3単位、「図形」を週2単位学び、この2年間で中学内容を終えます。複数の教員が一つの学年を担当しますが、シラバスをもとに授業を行うことで、どの教員が指導しても進度に偏りが出ないようにしています。
広野 高校ではいかがですか。
近藤 Bブロックで高校内容を修了すると、Cブロックからは希望進路に合わせて文系クラスと理系クラスに分かれます。数学の授業数は、高2の文系クラスが5単位、理系クラスが7単位、高3の文系クラスが4単位、理系クラスは変わらず7単位となります。
広野 貴校ならではのユニークな授業や課題はありますか。
近藤 英文で書かれた三平方の定理の問題をグループで考えたり、三角形の相似を利用して、大きな建物の高さを算出したりと、さまざまなアプローチから数学に親しんでもらうことを意識しています。先日は、中1の冬休みの宿題として「魏志倭人伝の一節から邪馬台国の場所を考える」という課題を出しました。魏志倭人伝には、現在のソウル付近から邪馬台国までの道のりが「水行〇日」「陸行〇日」という書き方で説明されています。それを手がかりに、一次関数を使って距離を割り出し、邪馬台国とされる場所がグーグルマップ上のどの辺りに位置するのかを推察するのです。すでにある「畿内説」や「九州説」を主張する生徒もいれば、岐阜県や鹿児島県といった新説を唱える生徒もいて、おもしろい考察がそろいました。これらの課題を通して、生徒たちには「数学を使えば、こんなことも解決できるのか」と、新たな気づきを得てほしいと思っています。
広野 貴校の特徴的な取り組みの一つに、身の回りの疑問や課題について調査・研究を行う「自調自考論文」があります。そこでも数学的な視点が求められるのではないですか。
近藤 はい。数学の授業でも統計やデータ処理について学びますが、それを知識として頭に入れるだけではなく、実際に手を動かして定着させることが大切です。その意味で「自調自考論文」は生徒にとって最適な実践の場。説得力のある論文を仕上げるには、論拠となるデータが必要ですから、授業で学んだことを積極的に活用してほしいと思っています。
広野 次に、中学入試について伺います。貴校は毎年、標準レベルから一歩踏み込んだ、歯ごたえのある問題を多く出題されています。作問にあたってどのようなことを意識されていますか。
近藤 われわれは、単純作業が得意な受験生よりも、思考力に長けた受験生を評価したいと考えています。したがって、中学入試では、物事を論理的に考える力が身についているか、そして、それを相手にわかりやすく伝える表現力が備わっているかを確認するための問題を、幅広いジャンルから出題するようにしています。
広野 他校に比べて、問題用紙の解答欄が大きいのも特徴的ですね。
近藤 はい。その理由は、答えだけではなく、そこに至る思考の過程までていねいに書いてほしいからです。たとえば、計算の途中で「12」という数字が出てきたら、それが何を意味する数字なのか、採点者にもわかるように書いてほしいということです。
広野 最後に、受験生に向けてメッセージをお願いいたします。
近藤 本校は、「自調自考」を大切にする学校として、目の前の問題を注意深くとらえ、論理的に思考できる生徒を育てたいと考えています。受験生の皆さんには、過去問に取り組んでいただき、出題形式や解答欄の大きさに慣れると同時に、小問の流れを見て「何を問われているのか」を意識しながら解き進めていってほしいですね。
School
Data
- 所在地
- 〒150-0002 渋谷区渋谷1-21-18
- TEL
- 03-3400-6363
- 学校長
- 高際 伊都子
- 創立
- 1996年、渋谷教育学園渋谷中学校を創立。1999年、高校を共学化し、渋谷教育学園渋谷高等学校を創立。共学の中高一貫校に。
- URL
- www.shibushibu.jp
自主性を重んじて、生徒一人ひとりの能力を引き出す
「自調自考」をモットーとする、男女共学の進学校です。自分の未来をきちんと見据え、いま何をすべきなのかを自主的に組み立てられる人間を育てています。自己管理能力を養うため、ノーチャイム制を導入。校外研修などにおいても、現地で集合・解散となるほか、シラバス(学習設計図)を配布して、授業の年間計画を確かめられるようにしています。校舎は地上9階、地下1階のハイテク仕様。透過型薄膜太陽電池ガラスを窓に設置して、発生した電気を校舎の一部で利用しています。