サピックス特別インタビュー
算数入試で問う力、
数学力を伸ばす授業~市川中編~
2026.07.16
市川中学校・高等学校では、「独自無双の人間観」「よく見れば精神」「第三教育」を基盤に、一人ひとりの個性を伸ばす教育を行っています。主体的な姿勢を育てる授業の特徴や求める生徒像について、数学科主任の秋葉邦彦先生に伺いました。
広野 貴校では、家庭教育を第一教育、学校教育を第二教育、そして生徒が自分自身を教育する姿勢を「第三教育」として大事にされています。この概念を、数学の授業にどのように反映させているのですか。
秋葉 グループワークや学び合いの時間を取り入れながら、主体的な思考を促す授業を展開しています。中1・2では、「数式」と「図形」を週3時間ずつ設定し、この2年間で中学内容を学び終えます。中3では「数Ⅰ」と「数A」がそれぞれ週3時間、高1では「数Ⅰ」が週4時間、「数A」が週3時間となり、高2以降は文理に分かれて、希望進路に応じた時間割となります。
広野 中学は1学年8クラス編成ですが、クラス間の足並みはどのようにそろえているのですか。
秋葉 定期考査や学年末までに到達すべきラインは担当者内で共有しますが、細かい授業内容については各教員の裁量に委ねています。『体系数学』をベースにオリジナルプリントを作るなど、各教員が工夫しながら授業を進めているのが特徴です。
広野 文部科学省のSSH(スーパーサイエンスハイスクール)に指定されていますね。独自の取り組みがあれば教えてください。
秋葉 学校設定科目「市川サイエンス」では、高2の理系クラスの生徒が、数学・物理・化学・生物・地学から分野を選択し、関心のあるテーマについて研究を行います。数学のテーマ設定の条件は、「これまでに先行研究のないもの」かつ「自分が1年間熱意を持って取り組めそうなもの」。どの生徒も大学の数学科のような本格的な課題研究にチャレンジしています。
広野 いくつか具体例を挙げていただけますか。
秋葉 過去には「2面サイコロを用いたNimのGrundy数」「ペンローズタイルの非周期性」「地政学上の要衝チョークポイントの数式を用いた絶対定義の考察」などがありました。数学の課題研究におけるいちばんの難関は、テーマ設定です。題材探しに苦労している生徒がいれば、こちらからヒントを出したり、「この本を読んでみたら」と関連書籍を勧めたりして、本人が「やってみたい」と思えるものを見つけられるようサポートしています。
広野 貴校の中学入試問題を拝見すると、受験生に要求するレベルが年々高まっているように感じます。どのようなこだわりを持って作問されていますか。
秋葉 わたしたちが求めているのは、伸びしろのある生徒です。そのため、公式や解法の暗記だけで解けるものはなるべく避け、自分の頭で考え、工夫することが得意な子どもたちが力を発揮できるような問題を心がけています。また、本校では、小学校の算数の範疇を超えた問題は出題しません。つまり、難解に見えても、よく考えていくと「円を描く」「直線を引く」というシンプルな作業で答えにたどり着けるような問いになっているということです。
広野 貴校を志望する受験生に、どのような力を身につけてほしいと考えていますか。
秋葉 まずは、数や図形に対する感覚を高めて入ってきてほしいですね。また、特殊算などの定番問題についても、解法を丸暗記して解くのではなく、「なぜそのやり方で解けるのか」という理由をあわせて理解しておいてほしいと思っています。
広野 最後に、受験生に向けてメッセージをお願いします。
秋葉 中学受験で効率的に点数を稼ごうと思うと、「解ける」ことが最優先となり、機械的なパターン学習に陥りがちです。しかし、算数や数学のおもしろさは「解ける」ことよりも、「解けない」問題をいろいろな角度から検証するところにあります。「こういう考え方があったのか」という発見や驚きが、モチベーションの源泉になりますから、日ごろから「なぜ」を意識して問題を解くようにしてほしいですね。
School
Data
- 所在地
- 〒272-0816千葉県市川市本北方2-38-1
- TEL
- 047-339-2681
- 学校長
- 及川 秀二
- 創立
- 1937年に市川中学校開学。戦後、新制市川中学校・高等学校となり、2003年から男女共学に。
- URL
- https://www.ichigaku.ac.jp
新しい世界への挑戦。第三教育を実践する課外活動の充実
1937年に古賀米吉によって創立。2003年に現在地に移転し、同時に男女共学となりました。個性の尊重と自主自立を教育方針として、人はみな、かけがえのない存在であるという「独自無双の人間観」、一人ひとりをよく見て能力を引き出す「よく見れば精神」、自分で自身を教育する「第三教育」の3つを柱とした教育を行っています。第三教育の場である図書館には蔵書が約12万冊もあります。また、日々の学びのなかで得た知識を生かす実践の場として、課外活動に参加し、体験することで大きな資産としています。 (2026年7月現在)