サピックス特別インタビュー

算数入試で問う力、
数学力を伸ばす授業~桐朋中編~

2026.08.20

桐朋中学校・桐朋高等学校は、「自主的態度を養う」「他人を敬愛する」「勤労を愛好する」を教育目標に掲げる男子進学校です。伝統とともに受け継がれてきた独自の数学教育と入試の狙いについて、数学科の千馬隆志先生に伺いました。

(左)数学科 千馬 隆志先生 (右)インタビュアー SAPIX小学部 教育情報センター 本部長 広野 雅明 氏

広野 初めに、中学の数学のカリキュラムについて教えてください。

千馬 1週間のうち、中1・2は代数を3時間、幾何を2時間、中3は代数を3時間、幾何を3時間設定し、本校独自の教材を中心に授業を進めています。たとえば、オリジナルテキスト「幾何(1)」「幾何(2)」は、1989年に初版が発行され、現在に至るまで14回の改訂が重ねられてきたもの。歴代の教員が継ぎ足し、継ぎ足し、改良を加えてきた、いわば“秘伝のたれ”のようなものです。

広野 これらのテキストにはどのような特徴があるのですか。

千馬 数学の専門書と同じように、①定義、②定理、③例題、④演習の流れに沿って学べるよう構成されています。文字量も多いため、初めて目にする中学生のなかにはカルチャーショックを受ける者も少なくありません。これらのテキストを通して生徒に伝えたいのは、「証明をきちんと書きましょう」「論理が飛躍しないように気をつけましょう」ということ。ここで培われる論証力は、数学のみならず、他人に物事をわかりやすく説明するうえで非常に大切な能力になるので、希望する進路が理系か文系かに関わらず、すべての生徒に身につけてもらいたいと思っています。

数学科のオリジナルテキスト

広野 中学入学直後は、小学校の算数と数学とのギャップに戸惑いを感じる生徒も少なくないと思います。学びのなかで数学に親しみを持てるような工夫などはありますか。

千馬 わたしの授業ではよく「数学コンテスト」を実施します。ここで出題するのは、パスカルの三角形を逆さまにした「アンチパスカル」の問題や、数字がすべて奇数の平方数のなかで最大の数を探す問題など、特別な知識や技術を必要としない、算数パズルのようなものが中心です。通学中の電車のなかでぼんやり考えたり、友人と計算を手分けしながら検証したりと、さまざまな楽しみ方ができるので、これらを入り口にして数学に興味を持ってもらいたいと思っています。

さまざまな解き方を皆で考えて楽しむ

広野 授業を進めるうえで意識していることは何ですか。

千馬 ふだんの授業では、生徒が板書した答案に対して、教員がその場で添削を行い、「別解を集める」ことを大切にしています。他人の答案を見て、「こういう解き方があるのか」と選択肢を増やすことができれば、類似問題に当たったときに対応しやすくなりますし、より“美しい”解答が書けるようになるからです。

広野 数学を苦手とする生徒たちには、どのような指導をされていますか。

千馬 算数や数学は、「何となくわかった気になる」のがいちばん厄介です。ですから、補習や講習をこまめに行い、ふだんからつまずきを見逃さないように気をつけているほか、「何となく」を100%の理解に持っていくことを意識しています。

広野 次に、貴校の中学入試問題の特徴について教えてください。

千馬 大まかに言えば、前半は計算を中心とした基本問題、後半は手を動かして考える応用問題となっています。応用問題では、小問1・2で比較的簡単なケースを与え、小問3では、たとえば、実際に手で書いて確かめるのが困難な、巨大な数を当てはめて考えるような問題を出題しています。算数は洞察力のトレーニングでもあるので、手がかりになる条件や法則性をいかに早く見つけられるかが鍵になります。

広野 最後に、受験生に向けてメッセージをお願いします。

千馬 算数や数学を習得するのは、実に骨の折れる作業です。数学を得意とする人が全員、天性のセンスを持っているというのは誤りで、その裏には膨大な演習量があると考えてよいでしょう。どの学問にも、楽して上達する道はありません。受験生の皆さんには、算数や数学をあまり難しくとらえすぎず、地道な努力を続けてほしいと思います。

入試問題にチャレンジ 桐朋中学校

School
Data

所在地
〒186-0004 国立市中3-1-10
TEL
042-577-2171
学校長
原口 大助
創立
山水育英会を母体に1941年、第一山水中学校として発足。1947年に桐朋学園を組織し、1948年に新学制により桐朋中学校・桐朋高等学校となり現在に至る。
URL
www.toho.ed.jp
校舎写真

授業や行事などで協働を実践し、ともに学ぶ楽しさを伝える

武蔵野の面影を残す文教地区に位置する男子進学校です。学校生活のさまざまな場面で、生徒が自律的に行動する機会を大切にしています。教育目標は「自主的態度を養うこと」「他人を敬愛すること」「勤労を愛好すること」。行事や委員会活動、部活動は生徒が主体となって企画・運営し、こうした学校生活を通じて、自ら考え、周囲と協力しながら行動する力を育んでいます。また、各種実験室や天文ドーム、プラネタリウムなどの専門施設も充実し、本物に触れる体験を通して知的好奇心や探究心を伸ばしています。 (2026年8月現在)