サピックス特別インタビュー

名門校は授業こそが魅力
〜立教女学院中・音楽編〜

2025.11.27

立教女学院中学校・高等学校では、1877年の創立以来、キリスト教教育を基盤とした女子教育を実践しています。日々の学校生活に深く根ざしている、聖歌を中心とした音楽の授業の特徴について、音楽科の森光世先生に伺いました。

(左)音楽科 森 光世先生 (右)インタビュアー SAPIX小学部 教育情報センター 本部長 広野 雅明 氏

広野 音楽は万国共通の言語であり、これからのグローバル時代に向けて身につけておきたい素養のひとつです。音楽の授業では、どのようなことを大切にされていますか。

本校はキリスト教の教えを基盤とする学校です。毎朝の礼拝や学校行事では、心を共にして聖歌を歌うことを大切にしているため、ふだんの授業でも聖歌を必ず最初に歌い、声と心をひとつにする時間を過ごせるようにしています。また、本校の音楽の授業は中1から高3まで必修です。生徒の日常には、いつもそばに歌や音楽があります。

広野 聖歌を通して、学校生活と音楽とが密接につながっているのですね。学校行事を拝見しますと、音楽と結びつきの強いものが多く見られます。

中1生は入学後すぐ、4月のイースター礼拝に向けて、聖歌を3~4曲覚えます。「時には苦しいことがあっても、その先には必ず希望がある」というメッセージの込められた歌が多いため、生徒は心情を重ねやすいのでしょう。生徒自ら、声だけではなく表情も使い、全身から感情をあふれさせて心情を表現してくれます。そんな生徒の歌には、授業をしている私も感動します。その後も、7月の高校合唱交歓会、11月のチャペルコンサート、12月のクリスマス礼拝、1月のコンサートホールでプロのオーケストラ演奏を聴くニューイヤーコンサート、3月の中学合唱交歓会と、音楽に関連する行事が1年を通して続くのが特徴です。

発声練習
手話をつけて聖歌を歌う

広野 チャペルコンサートでは、ハンドベルクワイヤーや聖歌隊に所属する生徒たちが演奏を披露するそうですね。

これらは奉仕団体の位置づけで、生徒が主体となって活動しています。ハンドベルクワイヤーは選抜制で約15人、聖歌隊は約30人が所属しています。聖歌隊は、校内の礼拝やチャペルコンサート以外にも、年に2回ほど高齢者施設でミニコンサートを行っています。どの生徒も得手不得手にかかわらず、「誰かのために歌ってみたい」という気持ちを持って参加してくれています。

広野 貴校の礼拝堂と講堂には、立派なパイプオルガンが設置されています。生徒が演奏する機会もあるのですか。

講堂で行われる礼拝では、高校生がパイプオルガンで伴奏を務めます。この伴奏については、中学のころからあこがれている生徒も多いので、立候補者が定員を超えた場合はオーディションを行うこともあります。

広野 授業のなかで、楽器の演奏に挑戦することもあるのでしょうか。

中3はクラス全員でマンドリンを習います。マンドリンは独奏にも合奏にも適していますし、体格や体力に関係なく弦楽器の基礎を学べる最適な楽器です。授業で初めて触れる生徒が大半ですが、意欲的に練習に取り組んでくれています。綺麗にハーモニーが作れた時の生徒の歓声と笑顔は、毎年の私の楽しみです。

広野 音楽は成績を点数化するのが難しい教科のひとつだと思います。評価はどのように行われるのですか。

与えられた課題に一生懸命に向き合ってくれた生徒には、その努力の部分をきちんと評価したいと考えています。定期テストでは基本問題だけでなく、「この聖歌の歌詞を読んで描いたイメージを、絵で表現してください」といった抽象的な課題を出すこともあります。技術や知識よりも、その生徒の持つ感性やオリジナリティーを大切にしています。

広野 音楽の授業を通して、生徒たちにはどのように育ってほしいとお考えですか。

学びの根源には感性があり、音楽はその感性を豊かにするものだと考えています。音楽を通して、人の心に生まれる自然な感情と丁寧に向き合ってほしいです。そして、教員も生徒もみんなで聖歌を歌い、祈りでひとつになる朝を重ねながら、隣の人と「一緒に」生きていくことを大切にする互いでありたいと願っています。

立教女学院中学校音楽家選定定期考査問題にチャレンジ

School
Data

所在地
〒168-8616 杉並区久我山4-29-60
TEL
03-3334-5103
学校長
浅香 美音子
創立
1877年、立教女学校を開校。1947年、学制改革により立教女学院を設立し、小学校、中学校を併設。
URL
hs.rikkyojogakuin.ac.jp
校舎写真

真の自由と豊かな人間性を求めて

キリスト教精神に基づき、「豊かな愛をもち、自らの賜物を磨き、喜んで他者のために用いることができる人」の育成を目標に、教科学習はもとより、語学教育や国際理解教育、宗教行事やボランティア活動、生徒会活動などを通して、国際的教養・宗教的情操・自主自立の精神を育んでいます。生徒一人ひとりの個性を尊重し、伸び伸びと育てる自由な校風であり、生徒の自主性を重んじる方針から制服もありません。立教大学への推薦入学制度があり、総枠数は204名。一定の要件を満たした者が推薦されます。ボランティア活動も盛んです。