サピックス特別インタビュー

名門校は授業こそが魅力
~海城中・理科編~

2026.05.28

国家・社会に有為な人材の育成をめざし、「新しい人間力」と「新しい学力」を伸ばす海城中学高等学校では、2021年に完成したサイエンスセンター(新理科館)を拠点に、独自の理科教育を展開しています。その意義と狙いについて、地学科の山田直樹先生に伺いました。

(左)地学科 山田 直樹先生 (右)インタビュアー SAPIX小学部 教育情報センター 本部長 広野 雅明 氏

広野 貴校の理科教育の特色について教えてください。

山田 創立以来の伝統である教養主義にのっとり、高1までにすべての分野を偏りなく学ぶのが特徴です。中1・2は、物理・化学・生物・地学の4分野を週に各1コマずつ、中3では物理・生物、高1では化学・地学をそれぞれ週に2コマずつ履修します。中1・2の2年間は特に、実物を見たり触ったりする機会を多く取り入れ、いかに彼らの関心を引き出しながら、次のステップに接続できるかを意識しています。高2以降は、志望大学の受験科目に応じた選択授業となりますが、希望者が5名以上集まれば地学のクラスも開講します。

広野 地学の専任教員を置かない学校や、高校の設定科目に地学を含めない学校も珍しくないなか、貴校の姿勢からは徹底した教養主義が伝わってきます。さて、2021年にサイエンスセンターが完成したことによって、どのような教育効果が生まれていますか。

授業で岩石薄片の偏光顕微鏡観察をしている様子
岩石観察以外にもさまざまな実験・実習が行われている

山田 物理・化学・生物・地学のそれぞれに専用実験室が完備されたことで、これまで以上に本格的な実験ができるようになりました。加えて、歴代の卒業生や教員らによって蓄積されたさまざまな標本を展示するスペースも増えたため、それらを興味深そうに眺めたり、実際に手に取って感触を確かめたりする生徒の姿が見られます。

広野 その充実した施設を活用し、地学科ではどのような授業を展開されているのですか。

山田 例えば、一人1台ある偏光顕微鏡を使って、岩石の観察などを行っています。偏光顕微鏡を使うと、肉眼では透明に見える岩石薄片が色鮮やかに見えます。本校ではさらに、サリチル酸フェニルの結晶が成長していく過程を観察する実験にも活用しており、冷却の仕方による結晶成長の違いへの理解を深めています。

広野 フィールドワークに出かける機会もあるのですか。

地学実験室には触れる標本が多数展示されている
希望者対象の富士山巡検(2025年)の様子

山田 希望者を対象にした野外巡検を年1回行っています。過去には秩父・長瀞、箱根、三浦半島・城ヶ島、富士山などに赴き、地質や地形についての観察を行いました。また、高3を対象とした今年度の「探究」の授業では、「石を拾う。石を磨く。〜岩石薄片作成実習〜」を開講しています。これは、河原で石を拾うところから、岩石カッターでスライスして「薄片」を作り、それを観察するまでの一連の作業を体験するものです。大学受験に直結する内容ではないにもかかわらず、30人弱の生徒が受講を希望してくれています。

広野 地学という学問を通して、どのような生徒を育てたいとお考えですか。

山田 自然や社会を多面的にとらえられる人になってほしいと思っています。地学は、災害・気候・資源・環境・宇宙など、われわれの生活と深いかかわりを持つ、世界の見方を学ぶための学問です。それまで気にも留めなかった足元に転がる石や、空に浮かぶ雲にも名前や特徴があると知った瞬間、目の前の景色は大きく変化します。生徒の授業アンケートを見ても、「岩石の名前を覚えた日、街が輝いて見えた」「世界の見え方が変わった」という感想が寄せられており、それこそが地学を学ぶ意義だと感じています。

広野 毎年、中学入試問題を作るうえで意識していることはありますか。

山田 試験を終えた受験生に「もっと知りたい」「調べてみたい」と思ってもらえるような、広がりのある題材を選びたいと考えています。時には、予期せぬジャンルから出題されることもあるかもしれません。しかし、知識量で勝負がつく問題ではなく、問題文を正しく読み取り、自分の手元にある知識とうまくリンクさせることで正解に近づくような作問を心がけていますので、臆せずチャレンジしてほしいと思います。

広野 最後に、受験生に向けてメッセージをお願いします。

山田 理科は、日常生活と密接につながっている教科です。ふだんの体験の一つひとつが考える力の土台になりますから、生活のなかで遭遇する現象に「なぜだろう」と疑問を持ち、背後の因果関係を考える習慣を身につけてもらいたいですね。

入試問題にチャレンジ海城中学校

School
Data

所在地
〒169-0072 新宿区大久保3-6-1
TEL
03-3209-5880
学校長
大迫 弘和
創立
1891年、海軍予備校として麴町に開校。1906年に海城中学校に改称。1947年、新制海城中学校発足。
URL
www.kaijo.ed.jp
校舎写真

リベラルでフェアな精神を持った「新しい紳士」を育成

創立134周年を迎えた男子進学校です。「国家・社会に有為な人材の育成」という建学の精神の下、リベラルでフェアな精神を持った「新しい紳士」の育成に取り組んでいます。2021年には「Science Center」が完成。「建物自体が教材」をコンセプトとし、物理・化学・生物・地学の専用実験室9室をはじめ、さまざまな学びの機会が提供される「新理科館」です。また、問題解決型の学力≒クリティカル・シンキングの力を、探究型の社会科総合学習や実験・観察に重きを置いた理科の授業などを通して積極的に養っています。 (2026年5月現在)