サピックス特別インタビュー

問いを立てる力を育てる
~芝浦工業大学附属中・理科(探究)編~

2026.08.31

最先端技術を駆使したものづくりを中心に、独自の理工系教育を推進する芝浦工業大学附属中学高等学校では、2021年にカリキュラムを刷新し「SHIBAURA探究」を開始しました。その探究活動の特色について、探究科主任の小川賢一郎先生に伺いました。

(右)探究科主任 小川 賢一郎先生 (左)インタビュアー SAPIX小学部 教育情報センター 本部長 広野 雅明 氏

広野 貴校の探究活動の特徴を教えてください。

小川 本校独自の「SHIBAURA探究」では、「誰かのための“新しい”を創る」をテーマに、理工系の知識を生かした社会課題解決をめざしています。中1・2では、『Information Technology(IT)』と『Global Communication(GC)』の両方に取り組み、中3ではその集大成となる『総合探究』にチャレンジします。高1・2では、その活動をさらに本格化させた「SHIBAURA工学探究」へと発展させていきます。

広野 まずはITの活動内容についてご説明いただけますか。

小川 ITでは主に、テクノロジーを用いた社会課題解決を実践しています。中1では航空会社と、中2では鉄道会社と企業連携を結び、ビッグデータの解析などを通じて、業務改善の提案を行います。また、プログラミングソフト「Scratch」によるドローン制御に挑戦するほか、CADやAIの自然言語処理技術に触れる機会も設けています。

広野 続いて、GCはいかがですか。

中2探究DAY発表の様子
中2データサイエンス授業の様子

小川 GCは、多様な価値観や異文化への理解を深めることを目的とした授業です。中1では、学校周辺を探索し「豊洲解剖図鑑」の制作をめざす「湾岸プロジェクト」を皮切りに、中2では長野農村合宿、中3ではアメリカ・オーストラリアへの海外教育旅行と連動した探究プログラムも実施しています。学年を追うごとに身の回りから世界へと視野を広げ、社会課題の解決につなげていきます。

広野 ITやGCで学んだことを、「総合探究」につなげるのですね。

小川 中3の「総合探究」では、まず「個人探究計画書」を作成し、関心分野の近い生徒同士でチームを組んで探究を進めます。ここで重視しているのはアウトプットです。1学期の間に、模型やアプリのプロトタイプを完成させ、2学期以降はそれらをブラッシュアップし、2月の「SHIBAURA探究DAY」で最終発表を行います。

広野 最新鋭の電子機器や充実した研究環境がそろっているのも貴校の魅力ですね。

中1ドローン授業の様子

小川 はい。200V電源を備えたファクトリーや、金属・木材を自在に切り出せる加工技術室、3Dプリンタが並ぶロボット技術室などを拠点に、生徒たちが自由に活動できるのは、他校にはない強みだと自負しています。

広野 探究活動のなかで大切にしていることは何ですか。

小川 最も重視しているのは、「問いを立てる力」です。中2のITの授業では、「良い問いとは何か」という議論に1時間費やすこともあります。探究活動では生成AIも積極的に取り入れており、生徒たちは指示の出し方によって得られる回答が異なることを学びます。そうした経験を繰り返しながら、高度なプロンプト作成能力を身につけてほしいと考えています。

広野 次に中学入試についてお伺いします。貴校では、「言語・探究入試」を導入しているほか、一般入試では筆記試験に加えて「聞いて解く問題」と呼ばれるリスニング形式の問題を出題されています。これらの狙いを教えてください。

小川 「言語・探究入試」とは、会話文、グラフ、表などのさまざまな情報源から正しい答えを総合的に判断してもらう試験です。ここでは、明確な解決策のない問いや課題に向き合う力を見たいと考えています。また、2026年度の理科の「聞いて解く問題」では、天気予報やアイスクリームの作り方を説明する音声を流し、その内容にふさわしい図や文章を選択する課題を出しました。これは、相手の話を正しく聞き取ることはもちろん、その内容を自分なりに解釈して行動に移せるかを確認するものです。

広野 それらの試験を通して、どのような生徒に入学してほしいとお考えですか。

小川 みずから仮説を立て、その仮説に至ったプロセスや理由を自分のことばで説明できる生徒です。それは、本校の探究活動がめざしている生徒像でもあります。本校でのさまざまな学びや体験を通して、その資質にさらに磨きをかけていってほしいですね。

入試問題にチャレンジ芝浦工業大学附属中学校 探究科 選定

School
Data

所在地
〒135-8139 江東区豊洲6-2-7
TEL
03-3520-8501
学校長
柴田 邦夫
創立
1922年創立。1954年芝浦工業大学高等学校となり、1982年中学開校。2017年豊洲新校舎に移転。
URL
www.fzk.shibaura-it.ac.jp
校舎写真

2021年から中学も共学化。先進のSTEAM教育で多様なスキルを育む

高校で女子生徒の受け入れをスタートして以来、2020年以降に卒業した5期の女子は、そのほとんどが理工系の学部へ進学しています。女子も理工系をめざす時代の流れを追い風に、2021年から中学でも女子の受け入れを開始。グローバル化が進む現代は、性別や民族・国籍にかかわらず、多様な価値観をもとに課題を解決する力が必要です。隣接する芝浦工業大学と連携を強めつつ、「社会に学び、社会に貢献する技術者の育成」という、芝浦工業大学の建学の精神を実践します。2026年度、共学化6期生が入学しました。 (2026年8月現在)