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中学受験フォーラムこぼれ話①
~偏差値の本質
2025.05.07
サピックス小学部 事業本部長 溝端 宏光
今年度の中学受験フォーラムにおいて、いくつかの会場で総括の講演を担当させて頂きました。その中で、時間の関係で講演内容から泣く泣くカットした内容について、今回と次回の2回に分けて触れていきたいと思います。
今回は「偏差値」について。講演の中で、志望校を検討する上で大事なのは「80%偏差値」よりも「50%偏差値」の方であることに触れました。
ただ、偏差値は絶対的なものではないことも知っておく必要があります。
学校偏差値は、学校の人気度とある程度連動しますが、入試1回当たりの定員数が少ないほど偏差値は上がる傾向にありますし、競合する学校が多いか少ないかによっても変わるなど、他の各種要因によって容易に変動してしまうものだからです。また、学校の偏差値が高いこととわが子に合うことがイコールではないのは言うまでもありません。
だからこそ、「偏差値○○以下の学校には通わせる価値が無い」のような決めつけは避けるべきと言えます。
また、成績の偏差値についても同様のことが言えます。テストにおける偏差値は、お子さまの学力状況を示す絶対的な指標ではありません。母集団の質や平均点、得点分布(ばらつき)によって変動するものだからです。たとえば、平均点が高いテストの場合、仮に満点を取ったとしても偏差値が62くらいにしかならないことがあります。こうしたテストでは、今までの平均偏差値が65だったお子様は必ず偏差値が下がって見えてしまいます。
本人がいかに頑張っていたとしても、他の子の得点状況によって偏差値は変動するものなのです。
保護者の方から「偏差値○○をキープする勉強法を教えてください」という相談を頂くことがあるのですが、この返答は難しいのですよね。上で述べた通り、本人の努力だけでどうにかなる指標ではないのですが、だからと言って「そんな勉強法はないです」と答えるだけでは、悩みの解決にならないですし…
このように、偏差値というものは、絶対的な指標ではありません。受験の世界では、「偏差値」という指標が色々なところで用いられるため絶対的なものと思い込んでしまいがちですが、実は上で述べたように極めてあいまいなものです。このことを知って偏差値と上手に付き合って頂くと、より的確な分析につなげて頂けると思います。