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「逆境」か「順境」か

2025.10.20

サピックス教務本部

「逆境」に対して「順境」という言葉があります。

「物事が思い通りにゆかず、期待とかけ離れている状態」が「逆境」であれば、「本人の意図にかなって、滞りなく成果が得られている状況」は「順境」だと言えます。そして我々は一般に、「逆境」を乗り越えて「順境」を維持しようと、取り組み方や関わり方を工夫していきます。お子様の学習においても、それは変わりません。

今回お話ししたいのは、成長という視点からの「逆境」「順境」との向き合い方です。

「逆境」は元来、本人の手応えや成果などから「状況が理解しやすい」ため、本人のみならず身近な人からの助力も借りながら、「意識して対処すること」が比較的しやすいと言えます。もちろん、その困難は軽視すべきではありませんが、「乗り越えるべき課題」が明確であり、その対処法も講じやすい分、克服のイメージは持ちやすいはずです。お子様の成長を考えるうえで、「逆境」のそのような点は前向きに捉えられるものです。

その一方の「順境」では、状況が異なります。

一見、物事が順調に捗っているので問題はないはずですが、「ある程度の成果」を得ている分、学習が単純作業に陥りやすく、自己分析や長期的な展望は持ちづらいと言えます。もちろん、「日々のコツコツした学習」は高く評価されるべきですが、それは「ある分野で一定の知識を増やすべき状況」でこそ、最適な手法でもあります。そのため、本人が自ら現状を打破し、「今までのあり方を変革しようとする意識」は育みづらいと言えます。「今までもこれで、上手くいっていた」という肯定感も、度を過ごせばお子様の成長を阻み、停滞の土壌にもなり得るということです。

このような視点から、次のように言えます。

「逆境」は、困難や苦しみを伴いますが、成長するうえで「改善すべき課題を見出しやすい場」でもあり、そのような点では「悲観し過ぎず、前向きに関わるべきもの」と言えます。そして「順境」は、一定の成果や安心を得られるものの、その順調さから機械的な学習になりがちであり、そのため「成長の材料や機会を失わないよう、注意すべきもの」と言えます。

「順境」「逆境」は、「意識の在り方」も大きく影響しますが、このような「考えるべき点」があります。そして、この2つはお子様の成長過程の中で、絶えず交代しながら繰り返していきます。

そのため、たとえ「順境」であっても「変わること」や「成長すること」への目配りを忘れず、そして「逆境」であってもその「ポジティヴな面」も十分考慮しながら、お子様と接していただければ、と思います。