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“ことば”は概念を閉じ込める器①
2026.06.22
サピックス小学部 事業本部長 溝端 宏光
溝端 宏光
先日、ある講演会の後で一人の保護者の方から質問を受けました。
それは、「算数には、なぜつるかめ算、平均算、……といったカテゴリー分けがあるのでしょうか?」という内容でした。
質問の趣旨は、立式して計算していけば、特に○○算と区分けしなくても解けるはずのものをなぜカテゴリー分けするのかというもので、変にカテゴリー分けをすることで、「○○算だからこう解く」といったように、考え方が固くなってしまうのではないかというご指摘でした。
確かに、仰ることは尤もです。例えば、つるかめ算の代表的な問題と言えば、
ツル(足2本)とカメ(足4本)が合わせて10匹いて、足の数の合計が26であるとき、カメは何匹いますか。
といったものが挙げられますが、数学的な表現をしてしまえば「2変数の和がわかっているタイプの一次方程式の問題」でしかありません。実際、中学生になって数学を勉強するようになると、一次方程式の1パターンとしてしか見られなくなりますので、カテゴリー分け自体が無くなってしまいます。
では、算数ではなぜこういったカテゴリー分けがあるのでしょうか。
私は2つの理由があると考えています。
その話をするためには、算数と数学の違いから話をした方が良いでしょう。
数学と算数の違いはいくつかありますが、まず大きいのは、数学は文字式を用いて解いていくことが多く、一般化して考える学問と言えます。文字式で用いられる\(x\)や\(y\)などが「変数」と呼ばれることからもわかる通り、\(x\)や\(y\)に入る数が変わったとしても成り立つ関係に注目していくことが多いわけです。
それに対して、算数は特殊化された世界の中で考える学問です。一部の単元や問題では一般化して考えることもありますが、速さや割合、和差といった文章題では、問題文で与えられた設定のときだけのことを考えて解いていきます。まずこの部分が大きな違いと言えます。
そして、その特殊化された世界の中での話であるがゆえに、その設定の場合限定であてはまる性質を利用して解くことがままあります。
例えば、割合の問題で、以下のような問題があります。
AさんとBさんがそれぞれお金を持っていました。最初の所持金はAさんがBさんの1.5倍でしたが、2人とも200円ずつ使ったので、Aさんの所持金はBさんの所持金の4倍になりました。Aさんははじめ何円持っていましたか。
サピックスのテキストを含め、算数の世界ではこういった問題は「倍数算」と呼ばれていますが、この問題も、数学的な表現をしてしまえば一次方程式の問題です。
ただ、この問題では、2人とも使った金額が200円で同じなので、最初の2人の所持金の差と、200円ずつ使った後の2人の所持金の差は同じです。つまり、差一定の関係が利用できるわけです。
算数の問題において、「その問題限定であてはまる性質」というのは和や差に絡んだものであることがほとんどです。そして、算数においては、立式した上で一般化して解くよりも、和や差に注目して解いた方が少ない手順で解ける、つまり“鮮やかに解ける”問題が多く見られることも事実です。
私もそうですが、数学よりも算数が好きな人は、こうした「あるポイントに気づけば鮮やかに解ける」というところに魅力を感じているケースが多いのではないでしょうか。
言いかえれば、様々な視点で問題にアプローチできることが算数の魅力の一つであり、だからこそ、「○○算」という形で色々なものの見方を勉強しているのだと私は捉えています。
これが私の考える理由の1つ目です。
ちなみに、本題とは少しずれますが、先ほど紹介したつるかめ算の問題では、例えば以下のような解き方をします。
10匹すべてがツルだったと仮定すると、足の本数は2×10=20(本)になるはず。
しかし、実際の足の本数は26本なので、今の仮定よりも、26-20=6(本)多い。
これは、ツルと仮定したものが実際はカメだったから。
1匹あたり足の数は4-2=2(本)違いがあるので、6÷2=3より、カメの数は3匹とわかる。
これは、極端な場合を仮定して、その場合と実際の場合との差に注目して考えていくという方法です。
上の解き方では、10匹すべてがツルであった場合と実際の場合とを比較していますが、10匹すべてがカメであった場合と比較することもできます。これはどちらでも構いません。
サピックスのテキストでは、つるかめ算を4年生で初めて扱います。そのテキストでは、表を書きながら差に注目して考えていく方法と、面積図を用いた方法の2つを紹介していますが、面積図を用いた方法も、結局は上のような考え方を模式化しているに過ぎません。
ちなみに、上の解き方の最後の1行は、算数的な言い方で言えば「差集めの考え方」です。
さらに話が逸れてしまいますが、私は、算数において一番大事なのはこの「差集めの考え方」だと思っています。つるかめ算の場合は、ツルやカメの数は整数しかあてはまりませんので、なんとなくの直感でも答を導くことができますが、旅人算の追いかけの問題など、答が整数であるとは限らない問題になると、考え方のイメージがあやふやだと途端に解けなくなってしまうものです。そのため、「差集め」のイメージを自分の中できちんと持っておくことはとても大事です。
ちなみにそれと同じくらい大事なのは「植木算」の考え方だと思っています。
(一番大事が二つあるじゃないかというツッコミはご容赦ください…)
間の数と木の本数の関係ですね。植木算の考え方を使いこなせているかどうかは、他の単元、特に数に関する単元の理解度にかなり大きな影響を与えます。そのため、「植木算」についても考え方のイメージを自分のものにしておくことがとても大事です。
どちらも4年生で学んでいく内容ですので、早めに考え方を身につけられるよう、学習を積んでいってほしいと思います。
というわけで、今回は主に算数の特徴について触れてきました。
「算数に○○算というカテゴリー分けがある理由が私の中では2つある」と言いながらまだ1つしか紹介していないですし、タイトルの「“ことば”は概念を閉じ込める器」には一言も触れていませんね……。
このあたりについては次回のブログで触れたいと思います。