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親子の距離感~ヤマアラシのジレンマ~①

2026.08.17

サピックス教務本部次長  田島 裕樹

サピックス教務本部次長 
田島 裕樹

動物園などで、ヤマアラシという生き物を見たことがあるでしょうか。背中からお尻にかけての毛が針のように固くなっており、ライオンなどの大型肉食獣もうかつには手を出せない生き物です。針には毒こそないものの、先端には「返し」があり、一度刺さると抜けにくく、炎症や化膿の原因にもなり、最悪の場合死に至ることもあるそうです。

ヤマアラシが登場する寓話があり、その概要は以下のようなものです。
「ある寒い冬の日、ヤマアラシたちが身を寄せ合って暖を取ろうとしていた。しかし、近づきすぎるとお互いの針が刺さって痛いので離れてしまう。離れると今度は寒さに耐えられないため、また近づくが、やはり針が刺さる。彼らは試行錯誤の末、お互いを傷つけずにすむ『程よい距離感』を発見する。」

この話は、人間同士の「相手と親密になりたい」という思いと、「近づきすぎて傷つきたくない、傷つけたくない」という思いの葛藤に似ていると、アメリカの精神学者ペラックにより「ヤマアラシのジレンマ」と名付けられました。

また、ヤマアラシ同士が「程よい距離感」を見つけたように、人間同士も程よい距離感を見つけるために次のようなことを意識するとよいとも言われています。
・自分と相手は違う人間であることを受け入れ、自分の感情や意見を押し付けすぎない。
・相手も自分も完璧ではないことを理解し、ありのままを受け入れる。

「親と子の程よい距離感」を模索するうえでも、わが子とはいえ、違う人間であるという前提や、わが子と同じように親御さんご自身もまた完璧な存在ではないということを忘れないことが大事です。

しかし、小学生のわが子相手に「程よい距離感を保つ」ことはなかなか難しいのも事実でしょう。その要因の一つとして、子供の精神年齢の成長は想像以上に早く、また、彼らが置かれている環境の変化もあいまって、親子の「程よい距離感」が時々刻々と変化しているからということが挙げられます。
幼いころは、子供にとっての世界のほぼすべてが「家族」ですが、成長するにつれ、「学校」「習い事」など様々なコミュニティに属するようになります。3年生、4年生くらいになると、多くの子は自分の属するそれぞれのコミュニティごとに自分の立ち位置やキャラクターを使い分けるようにもなってきます。

親としてはやや寂しいことでもありますが、「程よい距離感」はちょっとずつ離れていくものです。もしかしたら、精神的な距離感が離れていくことに先んじて、「そういえば最近、抱っこしてないな」と感じている親御さんも多いかもしれません。

本当は距離を置かなくてはいけないタイミングになっていることに気づけずに、近づきすぎて、うっかり針が刺さって抜けなくなってしまうよりも、少し寒いくらいの距離感を保つことを意識するほうが良いかもしれません。