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「わかってあげない」ことの効用
2026.10.13
サピックス教務本部本部長 加藤 宏章
加藤 宏章
「授業で何を学習したか、お子様のお話を聴いてさしあげてください」
SAPIX生の保護者様は、一度は聞いたことがあるのではないかと思います。相手に伝わるように話そうとすることで、自分の中で学んだことが消化され、整理されていくことを狙ってこういったお願いをするのですが、実は「子どもの話を聴く」のは結構たいへんです。
あちらこちらに話題が飛ぶ、話がうまくつながらないなど、大人側が疲れてしまいますし、そのうえ結局まとまらず、何をやってきたのかわからない…といったことも少なからずあるでしょう。最初は誰でもそんなもので、じっくりつきあっていく必要はあるのですが、うまくアシストするには「わかってあげない」ことが存外効果的です。
例えば、お子様が何かおっしゃるときに、「時計」とか「ごはん」とか、つい単語で済ませたりしないでしょうか?特に保護者様に対しては「わかってもらえる」という安心感があるでしょうから、そうなりがちです。そこで、(いつもですとケンカになりそうですので、)たまには「時計がどうしたの?」「それじゃあわからないよ?」といった反応をしてみてはいかがでしょうか。同じく、「面白かった」「つまらなかった」などの感想についても、「どこが」「どうして」面白かったのか聞いてみると、拙いながら自分の感じたことを消化できるようになります。
実はSAPIXの授業においてもそれは同じで、お子様の粗めの発言に対しては「どういうこと?もうちょっと詳しくお願い」「なんでそう考えたのか教えて?」と返していくことで、周囲のお子様の意見も取り入れつつ内容が洗練されていくのはよくあることです。大人の側には辛抱が必要ですが、成長段階にあわせ、適度に「そのままではわかってもらえなかった」経験を積ませてみてはいかがでしょうか。
ただ、余談になるのですが、集団で授業をするうえでは「簡単にはわかってあげない」とともに、「空白部分をわかってあげる」ことも大切だったりします。お子様は途中の段階を飛ばして結論に達することが往々にしてあり、それをうまく説明できないケースも多々あります。
そのときは私たち講師の側が途中の考えをくみ取り、「○○さんはこう考えたみたいだけど、皆さんどうかな」といった形で翻訳することもあります。「わかってあげる」ことと「わかってあげない」こと、うまくバランスをとりながら、じっくり伝える力を養っていきましょう。