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入試で出題される文章の傾向
2025.08.18
サピックス小学部 国語科
「入試に出そうな本を子どもに読ませたい」という相談をいただくことがあります。
入試問題の文章を読解することと、楽しみとして読書をすることは読み方の性質が異なりますが、実際の入試問題で出題されている作品は秀作が多く、受験のためとしてだけではなく、純粋に読書を楽しむという点でも素晴らしいものばかりです。
今回は、「どのような文章が入試で選ばれているのか」という点をお伝えします。
入試で出題される物語文の多くは、児童書から出題される傾向があります。
そして、児童書の多くは、現代社会を反映した設定のものが出版されています。
近年ですと「多様性」でしょうか。
たとえば2025年度の入試では、車いすの女子高生が登場する作品(『カラフル』阿部暁子 著・集英社)や、色覚障がいを持つ少年が主人公の作品(『ぼくの色、見つけた!』志津栄子 著・講談社)が出題されました。
様々な人との関わりの中で困難を乗り越え、精神的な成長をしたり、新たな気づきを得たりする展開は、入試問題の文章の中で多く見られます。これらは出題する学校が求める生徒像を反映しているものだと考えられます。
論説文では、毎年新書が多く出題されており、特に筑摩書房の「ちくまプリマー新書」、岩波書店の「岩波ジュニア新書」は要注意です。
受験生が理解しやすい身近な例を挙げながら著者の主張が論じられる展開の作品は、入試によく出題されます。
最近では自分と異なる立場の人を慮ることの大切さを説くもの、一般的な価値観では好ましくないとされる事柄を再度見直してみるといったものが文章の内容として多く見られます。
たとえば2025年度の入試では、『わからない世界と向き合うために』(中屋敷均 著・筑摩書房)や『悪いことはなぜ楽しいのか』(戸谷洋志 著・筑摩書房)という新書から複数の学校が出題しています。
すでにタイトルから気になりますね。
国語の問題として出会った文章に興味を持ったら、その出典となっている本を読んでみるのもよいでしょう。
読書を通して価値観を広げ、精神的な成長につなげてください。