サピックスの低学年教育

低学年からの通塾の意義と取り組み方

低学年からサピックスで学ぶお子さまが増えていますが、低学年だからこそのご相談・ご質問が寄せられます。低学年から学ぶ意義も含めてお答えします。

深く理解するために、「考える力」を養う時期。 週1回の授業で「学ぶ楽しさ」を。

近年の中学入試では、単純に知識の有無を問う問題は減っています。もちろん知識は大切ですが、それだけでは合格点は取れません。複数の知識をまとめて、それを整理して表現する力や、さらにそこから発展させて何かを考えていく力が求められています。そのためには、個々の知識事項や基本事項に関して、「なぜそうなっているのか」といった根底になる部分、前提になる部分をきちんと理解しておくことが重要です。

サピックスではそうしたベースの部分を4年生と5年生の2年間でしっかり身につけ、それをもとに、最後の1年間で入試に向けての実戦力を養います。

1~3年生までの低学年は高学年になって学ぶことの先取り学習をするわけではありません。高学年から必要になってくる「深い理解」のためのしっかりした下地を作りたい、あらゆる勉強の基本である「考える力」を養いたいと考えています。

すぐに正解を教えず、まず考えさせる授業を徹底。

さらに近年の中学入試問題では、典型的な解法パターンで解ける問題は急減しており、初めて見るような問題に、多様な角度から粘り強く考える姿勢が求められるとともに、アプローチが間違っていると感じたら、柔軟に軌道修正できる力も必要になっています。

では、そうした学力を養うためには、どのような指導方法が有効になるのでしょうか。おそらく多くの場合、子どもに「わからないから教えて」と言われると、すぐに張り切って教え込もうとするでしょう。それが良いとされることもあるかもしれません。しかしサピックスでは、生徒から質問されても簡単に正解を教えることはありません。「まず自分で考えなさい。間違っていてもいいから、自分なりの解答をひねり出しなさい」と指導します。確かに、教えられれば、その時はわかったような気になるでしょうが、苦労して理解したものでなければ、本物とはいえません。自分で四苦八苦して導き出した答えを、仲間たちの答え、さらには正解と対比し、どこが違っているかを確認することによって、初めて本物の理解が生まれるのです。このような「自分で考え抜く力」が身についていなければ、柔軟な発想、思考が要求される近年の中学入試問題に対応することはできませんし、将来の学力の伸長も難しいのではないでしょうか。

意外に感じられるかもしれませんが、サピックスでは自分で考えた答えが間違っていてもいいと考えています。授業は生徒から次々と意見が飛び交う討論式授業になっていますが、たとえ間違った考えを発言しても生徒同士で馬鹿にすることはありません。皆、苦労して考えているという仲間意識が醸成されているからです。講師側も、むしろ間違った答えは、皆で一緒に考える際の格好の教材、ヒントになると捉えています。

低学年から通ったお子さまは、中学入試で第一志望校に合格する比率が高いというデータがあるのは事実です。「なぜ、どうして」という言葉が飛び交う環境のもとで育った知的好奇心や自分で疑問に感じたことにじっくり粘り強く取り組む姿勢が、中学入試において強みを発揮しているのでしょう。


Q. 低学年のうちから塾に通わせる必要が本当にあるのでしょうか。

1・2年生は着実に学習する習慣を身につけさせることができる時期であり、教える側からしても高学年に比べてゆとりのある指導ができる時期です。また、3年生は思考力を育て、「自分で考え、工夫する」学習態度を養うのにとてもよい時期です。低学年での学習は、じっくりと時間をかけ試行錯誤を繰り返しながら、思考力や理解力を養うのに適しています。


Q. 低学年は週1回の授業だけで十分でしょうか。

十分です。3年生までは、興味や好奇心、関心の芽を養っていく時期です。週に3日も4日も通って勉強する学年ではありません。大切なのは学ぶことのおもしろさを知ってもらうこと。詰め込みは逆効果で、息切れの恐れもあります。サピックスでは、週1回校舎に来てもらい、その場で思いきり授業に集中してもらうことが何よりだと思っています。他の日は水泳でもピアノでも、お子さまがやりたいことをやらせてあげてください。そうやって、どんなことにもエネルギー100%で、目をキラキラさせて、「あれもやりたい、これもやりたい」と言うような、いろいろなことに興味を持つお子さまになってほしいと考えています。


Q. 小学校生活や習い事との両立は大丈夫ですか?

十分に両立できます。サピックスの授業は3年生までは週1回、4年生でも週2〜3回ですから、小学校生活や習い事などとの時間の調整は無理なくできると思います。実際、サピックスに通われていて習い事と両立させている方は多くいます。


Q. 授業の復習はどう進めればいいですか?

復習は「毎日ちょっとずつ」が大切です。保護者の方は傍らで「一緒に考えて」あげてください。復習を土曜や日曜にまとめて、というのはお子さまにとってつらいと思います。集中力も持続しません。一日に10分でも15分でもよいので、小分けにしてちょっとずつ、その代わり毎日やるようにしてください。そのほうが学習効果もあり、学習の習慣も身につきます。


Q. どのような教材を使用しているのですか?

特に低学年ではモチベーションを上げて、自分から「やりたい」という気持ちにさせることが大切です。さすがに低学年のお子さまが「志望校合格」を目標とするのは無理があるでしょう。勉強して楽しくなければ、短時間とはいえ机に向かってはくれません。この点において、サピックスの教材には工夫が施されています。図版も多く、いろいろなキャラクターが登場します。問題の設定自体も、キャラクターたちがゲームをしたり、クイズに答えたりしていて、それを読んでいるうちにいつの間にか深く、じっくり考えさせるように作られています。算数などでは、体を使って五感に訴える教材も多く、数や図形のセンスを、頭の中で理解させるのではなく、実感できるようにしています。勉強と考えず、その世界にどっぷり浸って、楽しんでテキストをご覧いただければ、それで十分です。


Q. 保護者にできることは?

サピックスに通われ、勉強が楽しいと感じても、最初のうちは一人で勉強することは大変かもしれません。保護者の方がついていられるようであれば、テキストを一緒に読み進めたり、ゲームのシチュエーションになっている設問は、一緒にやってみたりするのがよいでしょう。しかし、常に保護者の方がそばに寄り添う必要はありません。ときにはご家族で一緒に考え、楽しく進めてください。低学年を担当する講師も、授業において何か教えようという姿勢ではなく、授業への集中力を高めること、子どもたちが自ら発想したり、表現したりする部分を拾ってあげることに努めています。


Q. 安全面への配慮はどのようになっていますか?

3年生までは、終了時間が夜遅くなりすぎないようにしています。また、駅までは必要に応じて教職員が誘導するなど、安全面については万全のケアを心がけています。